『成人君子』
「ね 知ってる?今平成最後の夏だって」
「えー、あーそっか。来年の夏はもう元号違うんだ」
「でウチらさ、平成最後の夏に高2ってめっちゃ青春ぽくない」
「高3はもう受験で忙しいからね」
「めっちゃいい世代だわ。え てかさ、うちらってギリ成人式ハタチ?」
「えっもう決まったの 18歳成人のやつ」
「らしいよ」
「えー、えっじゃあ一個下は18歳成人のとき19歳だから一生成人できないんじゃね」
「それはそれでヤバいわ」
「どうすんのかな」
「知らん」
「ハタチとかやだわー、てか卒業が無理。もうJKブランド使えなくなるよ」
「JKブランドとか気にしてんの」
「いや気持ち的にさ。JKなら許されても、大人がやってたらうわーキツいわ、みたいにならん?」
「え自分でキツイってこと?なに?制服ディズニーとか?」
「制服ディズニー大人がやったらコスプレじゃん」
「あーね」
「あとプリクラとかさ。えっ大人になってからプリって行くの?」
「行かないんじゃない?え、どうなんだろ。調べよ……」
「なんかさあ昔は早く大人になりたかったんだけどさ、幼稚園のときは早く小学生になりたかったし、小学生のときは中学生なりたかったし、中学生んときは高校生なりたかったけどさ」
「わかる」
「今大人なりたくなくね」
「マジわかる、中学ぐらいからどんどん希望なくなっていくからね」
「どんどん目が死んでいくの」
「それな」
「だってこっから楽しいことある?お先真っ暗じゃね」
「ライブとか好きに行けんべ」
「まーそうか」
「大学は楽しいじゃん」
「大学はね。社会人よ社会人」
「いやだなー」
「マジあたしの人生幼稚園がピークだった。幼稚園が一番モテてたし」
「幼稚園一番モテてたはウケる」
「てかさ、あたし結構最近まで大人ってみんな偉いと思ってたの、めっちゃピュアじゃねと思って」
「えっどゆこと」
「大人はみんな頭良くてすごい人だと思ってたの」
「いや全然バカじゃん」
「でしょ、先生とかバカばっかでしょ、最近ようやく気づいたわけ」
「あー、いや確かに今思えばさ、小学校んときの先生とかアイツなんで先生やれてたんみたいなヤバい奴おったし」
「そーそーそー、だからまあ、たま〜〜にいい大人もいるけど、それ以上にヤベー奴意外と多いわみたいな」
「大したことないよね」
「そう、なんか先生の言うこととか真に受けすぎなくていいんだなって最近」
「あんたチョー真面目じゃん」
「でしょ。だからもうテキトーに聞いてる。あーハイハイって」
「うるせーってときあるよね」
「そー、なんか『そんなの社会に出ても通用しねえぞ』とかめっちゃ言われるじゃん、いや気持ちは分かるんだけど、でもゆうてまだ高校生じゃん?みたいな」
「あー」
「言ってることは分かんだけどね。甘えられるギリギリまでは甘えさせてほしいわみたいな」
「なんか『お前らもう大人だから』っつったり『まだ高校生だから』っつったり勝手すぎない」
「それな」
「あとさあ『3年生の0学期』とか」
「それめっちゃ嫌い!!いや2年生の3学期ですけど?って思う」
「正直あんま将来のこととか考えらんないよね」
「ウチら今を生きてるから」
「今を笑笑」
「なんかこう……別に偉い大人になりたいわけじゃないから。ギリギリまでJKやらせてくださいって感じ」
「あー、それかもね」
「てかさっきからなに見てんの」
「普通にインスタ。……見てこのストーリー」
「えっあいつプリ撮りに行ってんの」
「見てよこのスタンプ、『#平成最後の夏』だって」
「さっき言ってたやつじゃん笑 てか調べたのどうだったの」
「なにが?」
「大人になってからプリ撮るのか」
「んーなんか賛否両論だった」
「じゃ今度うちらもプリ撮りにいこ、今のうちに」
「いいよ、平成最後の夏だからね」
「そうそう笑」